陰謀のための結婚

「それなら、俺に結婚しようと言われたとき、もっと喜んでもよかったはずだ」

 鋭い指摘に戸惑いそうになるけれど、本心を口にする。

「お金持ちの御曹司と聞いていましたから、お金のために割り切って結婚できると思っていました。でも智史さんが素敵な人だったので、罪悪感が芽生えて」

「それを聞くと複雑だな。もっと嫌な奴なら、スムーズに求婚を受け入れていた? でも、そんなやつに香澄ちゃんが体を許す?」

 胸元にトンと指を置かれ、ドキリとする。

「自惚れたいんだよ。俺だからって」

 苦笑混じりに告げられて、私は堪らず彼の体に腕を回して抱きついた。

「存分に自惚れてくださいよ。智史さんじゃなかったら、こんなに苦しくならなかった」

 彼は「ハハ」と軽く笑う。

「ごめん。香澄ちゃんの話を黙って聞くつもりだったのに、どうしても確かめたくなって」
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