陰謀のための結婚
「長男として、後継者をという責任感はさすがにあったよ。けれどその責務から解放され、ますます結婚に興味がなくなった。そこに香澄ちゃん、きみが現れた」
「でも、私は妊娠できなくて」
自分で口にして、胸が痛い。彼の体に顔を埋めると、彼は優しく私の頭を撫でながら話す。
「一生結婚しないと言って憚らなかった俺が、どうしても香澄ちゃんと結婚したいと言ったときは、父も母も歓喜の舞でも踊り出しそうだったよ」
そのときの様子を思い出したのか、智史さんは苦笑している。
「でも私を選んだら、智史さんが得るはずだった我が子を腕に抱くという幸せを奪ってしまうんですよ?」
母にそれは違うと言われたけれど、やっぱりそう思わずにはいられなかった。