陰謀のための結婚

 城崎リゾートのトップには、彼ならどんな形であろうとなるだろう。けれど子どもだけは、どうにもならない。

「香澄ちゃんを選ばなかったら、俺は一生独身だよ。断言できる」

「そんなわけないじゃないですか」

「女に現を抜かす奴は、人生損してる。そう思って生きてきた。三十一年生きてきて、その考えを曲げさせたのは、香澄ちゃんただひとりだ」

「私、なにも」

「理由が必要? お互いに気づいたらキスしていたというくらい、強烈に惹かれたっていうのが一番の理由だろ?」

 彼は唇にキスをして、それから鼻を齧った。肩を縮める私に言い重ねる。

「香澄ちゃんこそ、俺と別れれば、いくらでもほかの男と付き合える。男への苦手意識も薄れただろう?」

 まさか自分に矛先が向かうとは思わなくて、力を込めて否定する。

「無理ですよ。今まで付き合いたいなんて考えもしなかったですし、智史さんの後ではどんな男性も色褪せて見えるに決まってます」

 そこまで言って彼を見遣ると、口元を手の甲で隠してはいるけれど、抑えきれない笑みをこぼしている。
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