陰謀のための結婚
「お忙しそうですね」
「ああ、城崎リゾートは、ある温泉地の再開発を進めていてね。具体的な場所を今は明かせないが、国や地域を巻き込んだ大きなプロジェクトだ」
智史さんは目を輝かせて話す。
「ホテルだけで完結しない、地域全てが活性化するシステムを作りたい」
「素敵ですね」
仕事の話をする彼はまぶしい。彼はやはり城崎リゾートの御曹司で、自分との立場の違いを感じた。けれど、彼は目を細めて言う。
「これは、香澄ちゃんが一緒に旅行に行ってくれたからだ。俺だけでは、今回のプロジェクトは任されていなかったよ」
「私はなにも」
心苦しくて彼から視線を逸らしても、智史さんは続けて言う。
「前に香澄ちゃんと行った、城崎温泉街を参考にたたき台を作ったんだ。あの旅行はとてもいい収穫だった。ありがとう」
まるで私のおかげとでも言わんばかりの言い方に、ますます彼の顔が見られない。