陰謀のための結婚
「まずふたりは、お互いをとても大切に思っていた。と、友恵さんの前でこの話をするのは気が引けるが」
三矢の妻にそう言って目配せをしたため、三矢の妻が友恵という名前だと知った。
「いえ、いいんです。その点は、私もわかっていますから」
本妻の余裕を聞いているようで、よくない感情が芽生えそうになり、慌てて城崎社長の話に集中する。
「香澄さん、きみの両親はお互いを気遣い合ったからこそ、別れたのだよ」
美しい昔話でも語る口調に、苦いものが胸につかえる。
「それがなぜ今頃になって、香澄さんに会おうと思ったのか。簡単に経緯を話すと、智史の弟が先に結婚して子どもを授かった。自分の娘も同じ歳のはずだと」
「わざわざ『先に』を強調しなくてもいいだろ」
ムスッとした声で智史さんはぼやいて「言葉のあやじゃないか」と城崎社長を笑わせた。