陰謀のための結婚
「遅くなったけど、食事にしようか」
智史さんに言われ、話してばかりいて注文さえしていないと気づく。
「長居してしまって、大丈夫でしょうか」
「打ち合わせで使ったあとに、食事を頼むと話してあるから気にしないで」
だから食事に誘われた場所が城崎リゾートのホテルなのだと、やっと理解した。
食事を済ませ、店を出る。
自然に寄り添って歩くものの、なにを話せばいいのかわからなくて会話はほぼない。
自分に関わる様々な思いを知ったせいもあり、このまま智史さんの側にいたかった。
歩いているのは駅の方角。早く伝えなければ、アパートまで送り届けられてしまう。
見上げると、優しい眼差しを向ける智史さんと目が合った。
「ん? どうした?」
「いえ。なにも」
目を逸らし、顔を俯かせる。
「今日は俺の家に泊まらない?」
心を読まれたような提案に、私は小さく頷いた。