陰謀のための結婚

 しばらくすると母が帰ってきて、楽しそうに今日あった出来事を話す。

「ネットで注文を受けられるお店を開いたの。見てくれる?」

 母はスマホの画面をこちらに向ける。そこには、アクセサリーと付け爪のショップのページが開かれていた。

 一見すると簡素にも感じるが、スッキリとまとまっている。その無駄のなさは、素人目に見ても上品で高級感があった。

 そして、ショップの名前をみて目を見張る。

「お母さん、これ」

 ページの一番上には、流れる字体で"かすみ草"と書かれていた。

「いいでしょう? いつか自分の店を持つときは、香澄の名前を使いたいと思っていたの」

 母の愛情を痛いほど感じ、目頭が熱くなる。

「やあね。泣くことないじゃない」

 母に微笑まれ、私は涙声で報告する。

「私、智史さんと結婚したい」

 脈絡もなく言ったのに、母は「まあ、そうなの」と呑気に答えた。

「智史さんとの赤ちゃんも」

 涙に濡れ、声を詰まらせる。

 自分と智史さんとの子どもがほしい。蓋をしていた想いが溢れて声にならない。

 母に抱き寄せられ、母の肩に顔を埋める。

「うん。そうね」

 母のぬくもりに涙は止まらなかった。
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