陰謀のための結婚

 人通りの多い週末。けやき並木を進んだ先にある、スタイリッシュな外観のホテル前で足を止める。上を見上げると高層階まで続くビルに、ため息が出そうになる。

 滅多に訪れる機会のない高級ホテルに、意を決して足を踏み入れた。

 フロアガイドを確認し、一階に"イタリア料理店ベルカント"を見つけると、店まで進む。目に映るもの全てが洗練された内装に、緊張が増して仕方がない。

 ベルカントに入るとすぐに出迎えられ、「三矢(みつや)の名で予約が入っていると思います」と告げる。

「はい。お伺いしております。こちらへどうぞ」

 初めて口にする"三矢"の名。家柄で反対されたと聞かされていたために、その名前が三矢不動産だろうと予想がついた。

 不動産関係に明るくない私でも知っている三矢不動産。予想が違っていればいいのにと思いながら、案内されるまま個室にたどり着いた。
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