陰謀のための結婚

 旅館に戻り、各々で旅館の温泉に入ってから部屋に行くことになった。浴衣とはいえ、さすがに真夏は熱かった。かなり汗をかいている。

 かけ湯で汗を流し、体を洗ってから湯船に浸かる。まだ早い時間のため、誰もいない。温泉を独り占めだ。

 さきほど見せてもらった外湯めぐりのページに、射的やレトロなゲームができる場所があるとの情報が見えた。

 また声に出すと彼に笑われてしまうから黙っていたけれど、楽しそうだった。

 こんなにも目に映るものが、楽しくて仕方がない経験をした覚えがない。

 それはきっと智史さんといるから。

 けれど、わかってる。これは期間限定だ。彼は大切な城崎リゾートの御曹司で、将来を期待された身。

 私は彼の側にいてはいけない。

 だから、わかっているから。この旅行の間だけ。と、自分に言い聞かせた。
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