陰謀のための結婚
部屋に戻ると、彼は窓側の椅子に腰掛けて庭を眺めていた。
「綺麗ですね」
日本庭園が美しく、絵になる風景が部屋から見られる。趣きのある灯籠に、枝振りのいい松、剪定された丸い植木。どこを切り取っても絵画のようだ。
「ああ、旅館も街並みも、古き良き日本の風景が大切に残されている」
癒される景色を前にして、彼は腕組みをして難しい顔をしている。
「なにか、悩んでいらっしいますか?」
「あ、ああ。ごめん。せっかく旅行に来ているのに」
組んでいた腕を解き、眉尻を下げた彼に首を振る。
「いえ。本当はお仕事でいらしたんですもの。私の方こそ楽しんでばかりで、なにも気が付かなくて」
「いや、楽しんでくれていい。勝手に仕事に絡めているだけで、完全にプライベートだ。本当にいい温泉地だと心から思った」