陰謀のための結婚
時間がかかるから早めに出発しようと、朝食を食べてすぐに城崎温泉をあとにした。
絶対に眠いはずだからと言われ、お言葉に甘えて早々に寝させてもらった。言われた通り、体がだるかった。
それでも、寝てばかりいた旅行だったためだろうか。子どもの頃の夢を見た。久しぶりに見る夢だった。
小学五年生のとき、仲のいい友達から生理になったと言われた。秘密を打ち明けるみたいにこっそりと。
たまたま私の周りは早く来る子が多かったようで、ほかにもそんな話がちらほら聞こえてきた。
『お母さん、私って生理まだなのかな』
何気なく聞いたひとことに、母の表情が変わった。今でも覚えている。聞かなければよかったと、随分後悔した思いも蘇る。
『香澄は病気で、妊娠できないのよ』
妊娠できないと生理が来ないのか、そのときに理解はできなかったけれど、この話題は触れてはいけないのだということだけはよくわかった。
そして大人になっても生理は来なかった。
でもそれでよかった。自分の出生と育ってきた環境のせいだろうか。男性と付き合いたいとは思わなかったし、まして結婚したいとも思わなかった。
智史さんに出会うまでは。