陰謀のための結婚

 仕事終わり、玲奈を誘ってイタリアンのお店に来ていた。

「珍しいですね。というより初めてですよね? 香澄さんが誘ってくれるなんて」

 母から《奥住さんと食事をして帰るから、香澄も友達と食べてらっしゃい》と連絡が入っていた。

 退院して間もないのに大丈夫? という小言を送ろうとして、思い止まった。家にひとりでいては、やきもきしそうという理由もあり、玲奈を食事に誘った。

「たまには、と思って」

 どう切り出そうと考えて、何故だかドキマギする。そういえば自分から、こういう話をするのは初めてだ。それはそうか、浮いた話なんてひとつもなかったのだから。
< 85 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop