もふもふ、はじめました。

百回

 流れる涙が落ち着いてから。

 岸くんの家で顔を洗わせてもらって、ポーチに入っているものだけでとにかく化粧直しをした。

 彼の部屋を出て、家までの道を二人で無言で辿る。

「……じゃ。ここまでで良いよ。ありがとう」

 駅前まで送ってもらうと、私は岸くんに笑顔で言った。彼は少し眩しそうな顔をして、頷く。

「本当に、家まで送っていかなくて大丈夫……ですね?」

「うん。岸くん本当にありがとう。また、週明けにね」

「はい。気をつけてくださいね」

 大きく手を振ってくれて、彼と別れる。

 だいぶ時間が、遅くなってしまった。そっと手に取ったスマートフォンには通知が山ほど来ていた。

 吉住課長からだ。何度も何度も謝っている。私のことが大事だと、何回もいろんな言葉で書いてあった。

 泣いている黒猫のスタンプ。
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