もふもふ、はじめました。

もふもふ、はじめました。

「岸は結婚したら、千世を諦めるのか?」

 シャワーを浴びた後、薫はそのまま獣化してくれて、私は素肌のまま、その艶やかな黒いもふもふに顔を埋めていた。

 岸くんとあの時どんな話をしていたんだって言われたので、聞かれるままに、そのまま話した。

 鮮やかなピンクの柔らかい肉球が、肩口にある私の顔を押す。

「……結婚式に来たら。きっぱりと諦めるって、言っていました」

「そうか。じゃあ結婚しよう。千世」

 私は、ばっと顔を上げた。

 器用に顔を傾けて、こちらの動きを伺っている大きな黒猫の顔をまじまじと見つめてしまう。

「え。でも、まだ私達付き合ってまだそんなに経ってないですよ?」
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