もふもふ、はじめました。
「彼氏と別れたよ。同じ会社に好きな人が出来たんだって。まあ今思うと二股するより誠実だったのかなって考えてる」

「えっ? え? この前までラブラブじゃなかった? ……急展開で驚くばかりだけど、大丈夫なの?」

 いきなりの別れに対する驚きに目を丸くする絵里に私は神妙に頷いた。

「それは、もう終わったことだから良いの。だけどこれは……これから話すことは内緒にして欲しいんだけど、良い?」

 もしかしたら、朝チュン危機だったかもしれない、二日前の土曜日の朝のことを語ろうとした。目の前の絵里の視線が、私の目のすこし上を見ていることに気がついたので、何気なく後ろを振り返った。

 吉住課長。

 黒にグレーのストライプの入っている細身のスーツを嫌味なく着こなして、彼の種族を思わせる大きな目はどこか不機嫌そうに細められている。絵里は私に意味ありげに目配せをすると、マグカップを片手に給湯室を何食わぬ顔をして出て行ってしまう。

 この裏切り者ー! 予期せぬ人の出現に出ていくタイミングを完全に逸した私は観念して、吉住課長と向かい合った。

「お、おはようございます。吉住課長」

「……ああ」
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