家出少女と恋愛小説家
「あの、恋人同士の設定で私のこと慰めてもらえますか?」

「俺は俳優じゃないぞ」

「でも、素敵なストーリーとセリフを仕立てられますよね?」

「それとこれとは関係ないだろ。ったく、あとでセクハラとか言うなよ」

「言いませんよ。わっ」

 佐伯は志保美の肩を抱き寄せ、志保美の頭を自分の肩にもたれかけさせた。志保美は自分で言っておきながら、男の人にこんなことをされるのは初めてだった。すぐそばで感じる体温にドキドキした。

「龍太朗さんって優しいね」

「誰にでも優しいわけじゃないよ」

 頭の上で低く響く佐伯の声が更に胸を高鳴らせる。アルコールとタバコの匂い。不思議な感覚に酔ってしまいそうだ。佐伯はタバコを大きく一息吸って灰皿の上にそれを置いた。

「きっと大丈夫だ。大丈夫」

 鼻の奥がツンとする。佐伯に優しく頭を撫でられ、その手のひらに温かさを感じた。頭を撫でるその手が演技でもいい。このまま彼にほだされてもいいと思った。志保美はただ佐伯の肩を涙で濡らした。
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