腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

***

 その日、すべての面談が終わって病院を出たのは10時を過ぎていた。

 私は病院の出入り口で救急車のサイレンにふと足を止め、一台の救急車が救急搬送口に入るのをぼんやり見ていた。

 緊急の怪我や病気で運ばれてきた患者さんは、病院で治療される。
 医師や看護師を中心とした医療チームが必死になって彼らを助ける。

―――でもすり減るばかりのその人たちの気持ちは?

 いつもそんな風に思ってしまう。
 患者さんの退院後の生活に寄り添うのが私の仕事だけど……。

 本当はね、先生の気持ちに一番寄り添いたいって思ってるんだ。

 できれば、心も身体も一つになりたいし……。
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