腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
「それにしても、久しぶりだな。結婚してからなんとなく誘いづらくなったし」
「別に遠慮しなくていいのに。先生も忙しくていつも遅いの。っていうか、リク先生のことずっと相談乗ってくれたの、斗真でしょ。結婚できたのも、斗真のおかげだよ。ありがとう」
私はニコリと微笑んで返す。
私がリク先生のことを好きになったのは、もう思い出せないくらい昔。
近所に住んでいたリク先生のこと、私はずっと好きだった。
そんなリク先生のことをずっと相談していたのが、同じく近所に住んでいた斗真なのだ。
「なんとまぁ、幸せそうにしちゃって」
斗真が呆れたように微笑む。
「うん、幸せ。やっと結婚までできたんだもん」
「そうか。それならよかった。ずっと距離が縮まらないって悩んでたもんな」
今でも……と言いかけて口を噤む。
「今は……大丈夫」
「あんなにできた年上の大人から見たら、ももは子どもとしか思われていないだけだろって思ってたけど。よかったよ、受け入れてもらえてるなら」
「うぐっ……」
その点に関しては正直に話しづらい。
夫婦になって半年。なにもないのは、まだ受け入れてもらえてないからだよね……。
思わず手に持っているビールを一気飲みして、
「おかわりっ」
と叫ぶ。すぐに来たおかわりのビールを、愚痴を言ってしまいそうな自分の言葉と一緒に飲みこんだ。