甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 それからすぐ、わたしたちが乗るタクシーもやってきた。

 わたしの隣に乗り込むとすぐ、島内さんはふーっと大きく息をついた。
「植田さんがそばにいると思うと、気分が良すぎて、つい飲み過ぎた」
 そう呟くとそのまま、腕を組んで目をつむってしまう。

 間が持たなくて、わたしは運転席の隙間から見える前の車のブレーキランプを見つめていた。
 アルコールと車の揺れでなんとなく眠たくなってきたとき、急に肩に重みを感じた。
「……!」

 いつのまにか島内さんが頭をもたせかけてきていた。
「島内さん、大丈夫ですか?」

 彼は「ん」としか答えず、目を閉じたまま。

 そのまま動かない。
 体温が伝わってくる。
 鼓動が急に速くなる。
 できれば、離れてほしい。
 でも、この間、道で手を払い除けたときの、彼のなんとも言えない切ない表情を思い出して、わたしは動けなかった。

 もう、あんな顔、させたくなかった。
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