甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
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終業を知らせるブザーが鳴った。
午後5時15分。
ようやく長い一週間が終わった。
黄昏時のオフィス街は週末を心待ちにしていた人が醸しだす、華やいだ空気に満ちている。
軽い足取りでわたしの横を過ぎ去ってゆく人々。
それが、最低最悪な気分に拍車をかける。
早くひとりになりたくて、ずっと下を向いたまま、ひたすら駅に急いでいた。
だから気づくのが遅れた。
人並みがとぎれたところで、向かいからかなりのスピードで走ってきた自転車に。
「あっ……」
強い風と共に、自転車はわたしの真横をすり抜けていった。
幸い、正面衝突は避けられた。
でも、よけて転んだ拍子に、手にしていたトートバッグを投げ出し、中身が道に散乱した。