甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 拾い上げたペンをわたしに差しだしながら、島内(しまうち)さんはかがみこんでわたしの顔を覗いた。

「いえ……どこも」
 わたしは首を振った。

 彼はふっと笑みを漏らし「良かった。ほら、立って」と、手を伸ばしてくれた。

 まだ、わたしにも手を差し伸べてくれる人がいたんだ。

 彼の骨張った、男らしい大きな手を掴みながら、そんなことを思った。

「派手にぶちまけたな」
 島内さんはバッグを拾いあげると、中身を入れはじめた。
「スマホの画面、みごとな蜘蛛の巣になってる。とっ捕まえて弁償させる? あの自転車、いつもこの辺りの舗道を爆走してるやつだ」

 あの自転車が通るのを待って、話がつかなかったら警察を呼んで……という彼を制してわたしは言った。
「いえ、いいです」

 そんな気力は自分のなかのどこを探しても残っていなかった。
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