甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 いや……俺も男の端くれだから。
 あの夜の彼女の柔らかい肌の感触とか吐息とかを思い出すと、たまらない気持ちになる。

 さっきだって、駅での別れ際、どれだけ抱き寄せてキスしたかったか。
 この生殺し状態によく耐えていると、自分で自分を褒めてやりたい。

 でも、彼女の気持ちがちゃんと俺に向いてくれるまでは、絶対手を出さないって、あの朝、誓った。

 誠意を示すにはそれ以外の方法はないと思ったから。

 でもなぁ……
 ここまで進展する気配がないと、さすがに精神的に堪える。

 俺はこれみよがしに、特大のため息をついた。

「おいおい、でっかいため息ついて。あーあ眉間に皺まで寄せちゃって。あくまで本気なんだな、あの子に」
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