甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
「ああ、自分でも情けなくなるほど、メロメロ」
「しかも一回、寝てるわけだしな」
「やっぱ、わかってくれる? そのつらさ。もう、あれからずっと耐えてる訳よ」

 栗原は憐みのこもった目で俺を見る。

「ま、とりあえず、弟と仲良くすればいいんじゃない?」
「まあな。ちょっと姑息な気もするけど」
「使えるものは何でも使わねえとそのまま膠着状態が続くぞ、たぶん」
「ああ、そうだな」

 目をつぶると、あの日の彼女が鮮明に思い出されてきて……
 あー、酔っ払わないとやってられない。

「なあ、テキーラ・サンライズくれ。濃いめで」

 なのに栗原の奴は、両手ででっかいバツを作りやがった。

「俺ん家に転がり込もうとしてる? 今日はダメ。梨花が待ってる」
「冷てえな……それでも親友かよ」
「そこは彼女優先に決まってるだろ?」
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