弁柄
それは、僕の生まれ育った街ではなかった。
町と言ったほうがいいような規模のその場所に
彼女は佇んでいた。
彼女は廃れかけた町の中で一際目立っていた。
全身に弁柄を塗りたくられ、
不自然に赤みがかった黄土色の肌に、
深紅の口紅をつけていた。
何も着せられず、
所々血の滲んだ美しくも見える身体が
目を閉じたまま見世物の様におかれている
その姿に暫く目を離すことが出来なかった。
風の音すら耳に入ってこなかった。
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