黒曜の戦場


「もっと、俺の事で頭がいっぱいになればいいよ」

「咲くんの、ことで?」



もう、いっぱいいっぱいなのに、もっと?



「足りない」

「……っ」

「でも嫌われちゃいたくないから、琥珀ちゃんは少しずつ俺を知っていけばいいよ」



咲くんを嫌うなんて……きっとそんなこと、ない、のに。

その瞳に捕らわれると、動けなくなる。

それを咲くんは知っているかのように、じっと見つめて、それから緊張をほぐすようにふわりと笑うんだ。



捕らわれる、囚われる、咲くんという不思議な人に。





そんな、今日はちょっぴり意地悪な感じのする咲くんの広い背を追って、今日も黒曜へとしごかれに行きました。

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