黒曜の戦場

25.いちばんめんどくさい奴とは?



「秋の空と花と紅葉、スゲェえもい」



そう呟いて、でかい体格でしゃがんだ角度からカメラを向けているいおくんは、この場にいる誰よりもきっと夢中になっている。

片手にはスケッチブックまで準備万端。



もはや地面スレスレの位置から何枚か撮影しては確認している姿は、職業病ではないだろうか?

今日はデートの日だよ?



角度を変えては何枚も撮っている不良に、道行く人たちが遠回りをして避けて行く。

いおくん……不審者みたいに思われてないかな?



「すーごい花が似合わなそうなのに、この場の誰よりも楽しんでる男がいるわ」

「いおくん、さすがマンガ家さん魂が火を噴いてるよねっ」



この日を別の意味で楽しみにしていたみっちょんは、いおくんが思いの外景色に夢中になっている事に舌打ちをしていた。

舌打ちする美人さんもなんだかかっこよく見えてきてしまうから不思議だ。



「アッチはアッチでぼーっと空見上げたまま固まってるし」



園にある紅葉と空を、ぼーっと……いや、真剣に見上げている未夜くんは、ぽかんと口が開いてしまっている。
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