甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》
結婚式





都内某ホテル新郎控え室

「壱…クリスマスイブの結婚式はマジでヤバいって」
「じゃあ誠は帰って店に出ろよ」
「大垣はその格好で店に出られるだろ?」
「いいぞ?俺と玲央でお前の分も料理は食ってやる」
「壱だけじゃなく、聖さん榊原さんまで…3人揃って手を振るなっ」

クリスマスイブの夕刻。暗くなるのを待つようにして空の見えるチャペルで行われた長谷川壱と花園紫乃の結婚式は親族のみの参列だった。残念ながら雪降るところは見られなかったが。

今から披露宴という新郎の控え室では親友、大垣誠がそのクリスマスイブという日取りに毒づきながらも念入りに身支度する。

「大垣が新郎って出て行けるような出で立ちだな」
「気合い入ってるんですよ。俺の司会進行を紫乃ちゃんが推してくれたんで」
「クリスマスイブはヤバいんじゃないのか?」
「店より壱と紫乃ちゃんだろ?」
「知らねぇ…誠が一人で言ってるだけ。だいたい紫乃が推したっていうのもおかしな言い分だよな…‘紫乃ちゃん、俺が仕切っていい披露宴にしてあげるよ?式場のプロの決まりきった司会進行より断然楽しいよ、どう?’と聞いて紫乃が頷いただけ」
「「自薦かよ…」」
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