パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
動いていいものかわからなかったけれど、貴堂がそっと後ろを振り返ると、驚いたような顔で紬希は貴堂を見ていたのだ。
「どうしました?」
「いえ……寂しいとか思ったことはなくて」
そうしてふっと紬希は瞳を伏せる。
「雪真さんから聞いているかもしれませんが、私は人が苦手なんです」
「うん。聞いてます。どうして? と聞いてもいい?」
紬希はいつもならこんなことは人には話さない。けれども、貴堂の持つ雰囲気とその穏やかな声に、急に聞いてほしいような気持ちになったのだ。
「怖くて……。お出かけしても、誰かに見られているような気がするのが、怖いんです」
それはあなたが綺麗だからだと言いたいけれど、そんなことでは解決しないような気がして、貴堂は言葉を発することが出来なかった。
「でも誰かに見られているかも、なんて言ったら『自意識過剰なのだ』って言われてしまうんじゃないかって」
それは、紬希が自分で思っていることではないのではないかと貴堂は察した。
「誰かに言われた?」
こくん、と紬希は頷く。
「学校に行っていた時も、社会人になってからも。服が好きで、アパレルの会社に就職したんですけど、私はこんな風なので店頭に出ることはできなくて、内務に配属になったんです。そこで面倒を見てくれていた先輩がいたんですけど」
「どうしました?」
「いえ……寂しいとか思ったことはなくて」
そうしてふっと紬希は瞳を伏せる。
「雪真さんから聞いているかもしれませんが、私は人が苦手なんです」
「うん。聞いてます。どうして? と聞いてもいい?」
紬希はいつもならこんなことは人には話さない。けれども、貴堂の持つ雰囲気とその穏やかな声に、急に聞いてほしいような気持ちになったのだ。
「怖くて……。お出かけしても、誰かに見られているような気がするのが、怖いんです」
それはあなたが綺麗だからだと言いたいけれど、そんなことでは解決しないような気がして、貴堂は言葉を発することが出来なかった。
「でも誰かに見られているかも、なんて言ったら『自意識過剰なのだ』って言われてしまうんじゃないかって」
それは、紬希が自分で思っていることではないのではないかと貴堂は察した。
「誰かに言われた?」
こくん、と紬希は頷く。
「学校に行っていた時も、社会人になってからも。服が好きで、アパレルの会社に就職したんですけど、私はこんな風なので店頭に出ることはできなくて、内務に配属になったんです。そこで面倒を見てくれていた先輩がいたんですけど」