見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
普通に結婚した間柄ならたぶん、喜んでくれるだろう。けれど私たちは契約結婚だ。必要としたのはあくまで利害の一致で、お互いの存在ではない。
ただの契約相手が妊娠したと聞いても、嬉しくはないのではないか……それどころか、迷惑に思うかもしれない。彼が子供を欲しいなんて、一度たりとも聞いたことないし。
隠すにしても、いつまでもそうはできない。じきに体調にも体型にも変化が出てくる。一緒に暮らしている限りは、妊娠をごまかすことなんて──
ふうっ、と息を深く吐く。私の気持ちはさっき、現状を告げられた直後から決まっている。それを彼に言えるか、言わずにおくかは真剣に考えなければいけないけど……
その時、廊下をバタバタと駆けてくる音が聞こえた。
音は近づいた後、靴とリノリウムの床が擦れる音に変わり、直後、病室の扉が一気に開く。
「はるちゃん、無事かっ⁉」
飛び込んできた稔くんの、絶叫とも言うべき声が室内に響き渡る。あまりの大声に、私は痛みも忘れてふたたび起き上がった。
開け放たれたままの引き戸の向こうに見えるのは、他の患者さんやお見舞い客が立ち止まる姿、そして呆気にとられた顔。
「突き飛ばされて頭縫ったって聞いて、顔色悪いんと違うか、起きてて傷口開かへんのか」
血相を変え、髪を乱した稔くんが相変わらずの声量で叫ぶので、焦って手で制する。
「と、とりあえず中に入って」