相思相愛・夫婦の日常~はる♡もも編~
放れたくない
「琢郎さん、ありがとうございました!
何から何まで、すみません!」
「いえ、永遠坊っちゃんの頼みですから!
大丈夫ですよ!」

丁寧に頭を下げる百枝に、琢郎も微笑み頭を下げた。

今日は永遠と百枝の、駅裏のマンションに引っ越しの日だ。
琢郎が全て手配をしてくれ、今終えたところだ。

再度琢郎が丁寧に頭を下げ、マンションを出た後、百枝は室内を見渡した。

「お義父様、かなり渋ってたなぁー」
契約前に百枝の意向で、永遠の実家へ出向き、再度永遠の父親に引っ越しの件を話しに行った。

お金は全て父親持ちなので、律儀な百枝はちゃんと会って話したいと思ったからだ。

『百枝ちゃんはいいの?
あんな狭いマンションで』
と、かなり渋っていた父親。

以前住んでいたマンションは、2LDKでとても広い間取りだった。
それでも、狭いと言っていた父親にとって今回の間取りはもっと気に入らないのだろう。

『はい。はるくんがいいなら、私は構いません。
全て、お義父様に甘えさせていただいてるのにこれ以上の贅沢なんて申し訳ないし……』
百枝が微笑むと、父親は渋々OKを出したのだ。

永遠は早くに母親を亡くしている為、父親は永遠にとても甘い。
滅多にNOと言わない。

その上、将来は会社を継ぐことになる永遠の機嫌をあまり損ねさせたくはないのだ。

百枝のこともとても可愛がってくれて、百枝はとても良好に結婚生活が送れている。

そして父親の命で琢郎が手続きなど全て行い、引っ越しを済ませたのだ。

今永遠は大学で、百枝は一人だ。

引っ越しなので休みを取ったのはいいのだが、引っ越し業者が荷解きまで済ませてくれた為、することがない。

「仕事、お休みにしなきゃ良かったな…」

まさか、荷造りから荷解きまでやってもらえると思っていなかった百枝。
手持ちぶさたになり、とりあえずソファに座り永遠にメッセージを送った。

『今、引っ越し終わったよ!
引っ越し業者の方が全部やってくれたから、暇だよ~
はるくん、早く帰ってきてね!
帰ったら、お買い物行こ?
冷蔵庫の中、からっぽだし』

買い物に出ることも考えたが、永遠に固く“外に出るな”と約束させられている百枝。

倫子の一件から更に過保護や心配が強くなり、永遠の束縛は酷くなっていた。


メッセージを送って数分後━━━━━━

永遠から電話がかかってきた。

「もしもし?はるくん?」
『ももちゃーん!何、あの可愛いメッセージ!!
“早く帰ってきてね”なんて言われたら、もう帰りたくなるよ~
今日はまだ、2時限もあるのにぃー』

「あ、ご、ごめんね!そんなつもりはなくて……
講義、頑張ってね!」
『フフ…なんてね!メッセージ、ありがとう!
講義、頑張るね!終わったら、急いで帰るからね!』

そう言って、通話を切ったのだった。
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