独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「言っておくがそれは原文じゃない。オリジナルは文章の特徴で人物の特定をされる可能性があるからな。勇気を出して声を上げた社員に迷惑をかける訳にはいかないから、俺が内容を纏めておいた」
「じゃあ今ここでデータを見せろよ」
「断る。それにこの手のデータは持ち出せないように、社外でのアクセスを禁止しているからな。それくらい知ってるだろ?」
「いくら社長の息子だからって、コンプライアンスまで介入していいのか?」
「ルール違反はしてない」
「嘘だろ? そんな……」
瀬尾ががくりと項垂れる。
「分かっただろ? 瀬尾には信用がない。プロジェクトから外したとしても反対はないはずだ。
「くそ……」
瀬尾はすっかり戦意喪失したようで反論して来ない。
「降格や異動も覚悟しておくんだな」
真っ青になった瀬尾を置いて晴臣は部屋を出た。同時に出来たての料理を持ってスタッフが現れた。
「え? こんな気分で食事なんて出来るか! くそ! 晴臣のせいで!」
ヒステリックに叫ぶ瀬尾を置いて、晴臣は早々に立ち去った。