独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
オフィスに戻ると、同僚の坂田に出迎えられた。
彼は晴臣と瀬尾の同期でもある。瀬尾に比べ出世は遅れているが、誠実な人柄が好ましい人物である。
「晴臣、瀬尾はどうだった?」
「予想通りヒステリックに喚いた。自分の非は認めなかったな」
「やっぱりな。そういうやつだよ、あいつは。環境をがらっと変えて学び直さないと、あの性格は治らないんじゃないか?」
坂田には半年前から情報収集を頼んでいた。
瀬尾が瑠衣の元恋人だと言い出し、彼女の話をするようになってすぐの頃。
晴臣に対してやけに挑発的な瀬尾がいつか何かするのではと懸念したのがきっかけだ。
坂田を中心とした信用できる同僚たちの協力で瀬尾の素行に関する情報を集めていた。
結果は酷いものだった。瀬尾は妬みやすい性格のようで、他人の失敗を喜ぶくせがある。
それでいて不寛容だから扱いが難しい。
彼の人柄が受け付けられないという同僚は多かった。
晴臣も出来るだけ距離を置きたかったが、理由もなしに遠ざけるのは難しい。
そこで瀬尾が自ら失敗をする機会を伺っていた。
おかげで今回スピーディーに動けたから、行動しておいて良かったと思う。
「処罰はどうする?」
「大したことは出来ないな。社内規定に明らかに違反しているなものが無いんだ」
瀬尾の方も、妙な企みをする一方で用心はしていたらしい。
「抜け目のないやつだな。がっかりだ」
「仕方ないだろ? まあ人事異動で地方に飛ばすくらいならなんとかなるかもな」
「そうだな。名古屋ホテルが気に入ってたし、そこに降格で送ってやれば? 客室課が人手不足だって言ってたしな」
「分かった、任せろ」