独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
その後、瀬尾は花形部署の事業統括部から移動予定になった。
せめてもの温情で本人が気に入っていた、新規開業ホテル地区の客室部が新たな所属になったので本人も満足しているだろうと、同期の間では語られていた。
しかし晴臣は、瀬尾が散々文句を言いながらも、大人しく人事命令に従ったことに少し驚いた。
プライドが高過ぎる彼の性格なら退職する可能性が高いと思っていたのだ。
異動の為の引継ぎをする一方で、瀬尾は身内からクレームが上がっていた事実を恐れ、神経質になっていた。
なんとかして誰が文句を言ったのか知りたいと考えていたようだ。
しかし瀬尾は勘違いをしている。
あの時、晴臣が手にしていた情報は、コンプライアンス部から得たものではなく、晴臣と坂田たちが個人的に集めた瀬尾の評判を一覧にしたものだったのだ。
コンプライアンス部という言葉を出し、少し意味深な言い方をしたら、瀬尾が勝手に誤解した。
社員の個人データのようなものは、いくら社長の息子でも簡単には手に入らない。
その辺のプライバシー保護を神谷ホテルは重要視してると、社員だったら分かっているはずなのに
騙されているのは可哀そうだが、自業自得でもある。
これまで人を散々騙して来た罰だ。
それに内容は嘘偽りはなく、皆が彼に感じていた不満。この機会に自分を見つめない添いてくれたらいいと思う。
晴臣個人が今後付き合うつもりはないけれど。
その後すっかり大人しくなり存在感が無くなった瀬尾だが、聞いた話ではプライベートの問題も抱えており、参っているようだった。
舟木美帆が会社に居づらくなったからと退職を希望しているらしく瀬尾に責任を取るように迫っているのだとか。
瀬尾は必死に逃げていて、転勤につても黙っているらしい。
バレた時に大変なことになりそうだ。