独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「この企画は絶対にやりたかったんだよな。全室スイートのラグジュアリーホテルなんて俺に向いてるだろ?」

「そうなのか?」

「担当していたリニューアル物件が、先月オープンしたんだけどさ、リーズナブルな価格設定が売りだったせいか、趣味に合わなかったんだよな。客層もちょっとな……」

いかにも苦労しているといった表情で言われ、晴臣は顔が引きつりそうになった。

(そうだ。こいつのこういうところが苦手だったんだよな)

全面リニューアルをしたホテルは、晴臣も企画の段階で関わっており、社内外からかなり高評価を貰っている。

彼の言う通り、手ごろな価格でイメージもカジュアルなものになっていて様々な世代から利用されている良いホテルだ。

瀬尾は気に入らない様子だが。

以前から彼の他人を見下すところや、何かとあら探しをして、否定的にとらえる所が不快だったなと思い出す。

「なあ、久々に飲みにいかないか? いろいろ聞きたいこともあるし」

「悪い、今日は予定があるんだ。聞きたいことって?」

断られたのが気に障ったのか、瀬尾が眉を顰めた。

「お前が結婚したって聞いたからさ」

「ああ、とは言っても、特に話すようなことはないけどな」
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