独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「晴臣も大変だよな、感情的な女が嫁でさ。上手くストレス解消しろよ?」

「大変と思ったことはないな。瑠衣は穏やかだし、妻としてよくやってくれている」

瀬尾がへえと眉を上げた。

「穏やかってあの瑠衣が? 信じられないな。晴臣みたいに地位と金がある男と結婚したらめちゃくちゃ嫉妬しそうなのに……あ、そうか。お前たち見合いだったもんな。恋愛とかそんな感じじゃないってことか」

ひとり納得して頷く瀬尾。

もし許されるのなら殴ってしまいたいと物騒な考えを浮かべながら、晴臣はギムレットを飲み干して席を立った。

「悪い、この後別件が入ってるんだ」

「そうなのか? 残念だな。俺はもう少し飲んでいこうかな」

「ああ、そうしてくれ」

「晴臣、またな」

ヒラヒラと手を振る瀬尾に晴臣は頷いて返す。

颯爽と歩いてバーから出ると、更に加速して駅に向かった。

別件などないが真っ直ぐ帰宅する気にはなれなかった。

今瑠衣の顔を見たら、何か良くないことを口走ってしまいそうだからだ。

行きつけのバーに移動して、カウンターの端の席でヤケ酒をする。

(何が嫉妬深いだ)
< 25 / 108 >

この作品をシェア

pagetop