独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
瑠衣より少し年下だろうか。

黒地に鮮やかな花の絵が描かれたワンピースと日本人にしては彫が深い顔立ちが印象的だった。
瑠衣とはまた違った印象の美人だ。

「よかったら一緒に飲みませんか? 私もドタキャンされてしまったんです」

客観的にみると華やかで美しい笑顔なのだろう。

これ程の美人に誘われたら喜ぶ男は多そうだ。しかし晴臣の心はほんの僅かも波立たなかった。


「いや、今はひとりで飲みたい気分だから」

断られるとは思っていなかったのか、女性が目を見開いた。

「あ、あの……そうなんですね。ごめんなさい、お邪魔して」

「ああ」

話は終わりと彼女から目をそらしたが、立ち去る気配がない。

気にはなったものの声をかける気にはならないでいると、諦めたのか踵を返して離れていった。



その日から瑠衣との関係が変化した。

彼女の顔を見るとどうしても瀬尾の言葉を思い出してしまうのだ。

イライラして瑠衣を責めたくなる。なんで瀬戸なんかと付き合ったんだと。感情を爆発させるほど好きだったのかと問い質したくなる。

彼女は何も悪くないと頭では分かっているのに。
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