独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
もし聞こえてしまったら、次に来づらくならないのだろうか。

「ところで、旦那さんとは仲直り出来た?」

「え?」

「ほら、前に結婚記念日に帰って来なかったって凹んでたじゃない。」

「ああ……うん、上手くやってるよ」

表面上は。喧嘩もしていないし、彼が早く帰って来たときは会話もある。

(セックスはないんだけど)

依然として改善しない悩み。

簡単なことのようなのに、なぜ上手く話し合えないのか我ながら不思議だ。

「よかった。あの時は仕事だったらしょうがないとしか思わなかったんだけど、よく考えたら違ってたのかなって心配になったから」

突然妙なことを言い出した那々の言葉に、瑠衣は首を傾げた。

「どういう意味?」

「私の学生時代の友達も結婚してるんだけど、夫に浮気されたんだって。それが瑠衣と同じように記念日をすっぽかして発覚したらしいから」

「え……浮気?」

「そうそう。友達の誕生日なのに全然話題にして来ないからサプライズでも考えてるのかなって密かに期待していたんだって。でもその日の夕方に急に飲みに行くって連絡が来て外泊になったみたい。当然喧嘩になって浮気が分ったんだけど、旦那さんは友達の誕生日を本当にすっかり忘れてたそうだよ。」
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