独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「あの、誤解なんです!」

「誤解? 一体何を」

美帆はかなり感情的になっているようで、腕を伸ばし晴臣の体に触れて来た。

当然振り払おうとしたとき、彼女が予想もしなかった台詞を口にした。

「私が神谷さんに近付いたのは、頼まれたからなんです!」

「……どういうことだ?」

「あのとき……神谷さんが出入りしているバーを教えられたんです。そこで待っていれば運が良ければ会えるからって」

彼女の話は要領を得ない。秘書としての評価は高いと聞い平で、今はかなり混乱しているのだろう。

「それは誰に聞いたんだ?」

「神谷さんと同じ会社の、瀬尾さんにです」

晴臣は息を呑んだ。

(瀬尾が関わっているのか?)

これは想定外で美帆の話を聞く必要があると感じた。晴臣は素早く時間を確認して、美帆に移動するように促した。

「付いて来てくれ」

どこか落ち着ける場所で事情を聞くつもりだ。
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