独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「私はかなり気まずかったけど、彼は平然としてたわ。それどころかまるで旧友にあったみたいに慣れなれしかった。私の連絡先を誰かから聞きだしたみたいで電話までして来たの」
昨夜の憤りを思い出しながら語っていると、晴臣の表情がとても険しいものになった。明らかに瑠衣より怒っている。
「あいつ、船木美帆の件といい何を考えてるんだ?!」
「え……分からないけど、でももう連絡して来ないようには言ったの。しつこくしたら晴臣さんに言いつけるって」
「それでいい。瑠衣はもうあいつと関わるな」
きっぱりと言う彼に瑠衣は目を丸くした。
(晴臣さんがこんな風に私の行動を制限するのは初めてかも)
彼はいつも余裕があって、瑠衣の自由を認めてくれていた。理解のある夫ではあるけれど、ときどき寂しい気持ちにもなった。
瑠衣が黙ったままなことに気づいたのか、晴臣が弁解するように言う。
「頭ごなしに言って悪かったな。でも瀬尾は危険だ。あいつが何を考えているのかはっきりするまで……」
「分かってる。問題がなくても瀬尾さんとは関わる気はないから」
説得を続けようとする晴臣を、瑠衣が柔らかい口調で遮る。彼はほっとしたようだ。
「ああ、それなら安心だ……でも本当にいいのか? あいつに対してまだ未練があるということは? 嫌な別れ方をしたと言っていたくらいだから、すっきり終われなかったん
だろ?」
「すっきり終わってはいないけど未練はゼロ、私は晴臣さんの妻なんだから。会うなって言ってくれて嬉しかったくらいだもの」
「嬉しい?」
「晴臣さんに必要とされているように感じて嬉しかったの」
心が近づいた気がした。