独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「気にしてたよ。ずっと晴臣さんが好きで、それなのに近づけなくて寂しかった。夫に愛されてないって実感するのは本当に辛かった」
ずっと胸に秘めていた気持ちを言葉にしたら、ぽろりと涙が零れてしまった。
(また私、感情的になって)
だけど抑えようとしても、無理だ。
早く泣き止みたいと思っていたそのとき、ふわりと体を抱き寄せられた。
「ごめん……こんな風に泣かせるなんて俺は最低だ」
「違う。晴臣さんは最低じゃないよ」
本心だけれど、久しぶりの夫の温もりが心地よくて、感情が揺さぶられる。
余計に涙が止まらなくなった。
「瑠衣聞いて欲しい。この半年俺瑠衣に触れたいと思ってた。でも情けないことに臆病になってたんだ」
「臆病って晴臣さんが?」
あまりに似合わない言葉に驚き、彼の胸に伏せていた顔を上げる。
「そう。瀬尾に瑠衣と付き合っていたと聞いてから不安になった。それで以前のように当たり前のように触れられなくなったんだ」
「晴臣さんが? そんなこと嘘みたい」
彼が瑠衣のことで、自信を失い右往左往するなんて。
「本当だ。瑠衣の気持ちがまだあいつに有ったらと思うと不安になった。抱きたくても拒否されるのが怖かった。自分でも弱気さに戸惑ったけどな。ただこれじゃあ駄目だと結婚記念日になんとかしたいと思ってたんだけどな」
「え? すごい偶然だわ」
瑠衣の唇からぽつりと漏れた言葉に、晴臣が首を傾げる。どういう意味だ?と瑠衣を見つめる目が問いかけている。