愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
「口説いたつもりはなかったのですが。……ならばあなたは、どんな方と恋に堕ちたいのですか?」
「え?し、知りたいの……ですか?そんなことを」
シャーリィは焦った。
それをウィレスに訊かれるのは、何故だか異様に恥ずかしい。
うろうろと視線をさまよわせた挙句、シャーリィは逆に問い返した。
「そ、そういうあなたこそ、どんな方と将来結婚なさるおつもり?」
「私は、できることならば、生涯妻は娶らぬつもりです」
「え……?でも、それでは、後継ぎはどうなさるの?」
「妹が結婚して子ができれば、その子を後継ぎに据えたいと思います。もしそれが無理なら、従弟を養子に迎えて後を譲ることも考えていますし」
「どうして、そこまでして……」
「私はきっと、生涯ただ一人しか、愛することができません。ですから、不幸にすることを知りながら、妻を娶ることはできません。それでも、妻を娶り子を成すのが、義務なのかもしれませんが……それでも、抗える限りは抗おうと思うのです」
(生涯ただ一人の人……。そんな人がいるなんて、私、今まで聞いたこともない)
今まで知らなかった兄の一面を目の当たりにし、シャーリィの心は寂しさと戸惑いに揺れた。
だがその一方で、未知なる世界に踏み込むような興奮を覚えてもいた。
もっといろいろな話を聞き出したいと、シャーリィは夢中で唇を開く。
『妹』としてのシャーリィには見せてくれない兄の別の顔を、もっともっと知りたくて……。