竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
「やっぱりお綺麗よね。エルナお嬢様。美人が多いこの国の中でも、桁違いに美しいわ。……伯爵様の指示さえなければ、いつもこうやって私たちの手で着飾ってあげられたのに……」
庭園を散歩するエルナを遠巻きに見つめながら、数人のメイドがひそひそと内緒話を始める。
「伯爵家の生まれであんな美貌を持っているのに、ルードヴィヒのところへ嫁ぐなんて……エルナお嬢様が気の毒すぎるわ」
「前の奥様さえ生きていればねぇ……」
メイドたちは、心底エレナの境遇に同情しているようだ。そんなメイドの思いなどつゆ知らず、エルナは最後の散歩を楽しむように、ゆっくりと庭園での散歩を続けている。
(お母様が生きていたころ、手を繋いでここを散歩したのよね。ふふっ。懐かしい。……こことももう、お別れなのかぁ)
過去の楽しかった記憶を思い出していると――。
「エルナ! ……ここにいたのか」
エルナの背中に向かって、名前を呼ぶひとりの男が現れた。茶色い髪を風になびかせ、ひどく焦った顔をしている。
「ヨハン! どうしたの?」
庭園への来客者は、幼馴染のヨハンだった。
「どうもこうもないよ! 君がシェーンベルグへ行くと聞いたから……」
話を聞くと、ヨハンは公爵家の仕事の都合で、ここ数日は離れの屋敷で過ごしていたという。そこでエルナの話を聞いて、急いで王都へ戻ってきたようだ。
「……あの話、本当なのか?」
ヨハンはまだ、現実を受け入れられていないようだ。しかしエルナもまだ、自分が母国を去り竜人の国へ嫁ぐという実感がなかった。
「……ええ。本当よ」
しかし、実感はなくとも事実は事実だ。こんな状況でも変わらない笑みを浮かべるエルナを見て、ヨハンの胸はひどく締め付けられる。
「どうして君が……まさか、エルナが選ばれるなんて」
ヨハンの顔がみるみるうちに真っ青になる。
事実を突きつけられてなお、ヨハンは現実を受け入れられずにいた。
「今までありがとうヨハン。……これからは、ひとりでうまくやっていくから。心配しないで」
「……そんな、今からでもどうにか」
「大丈夫だから。……アリーシャと仲良くね。私、ヨハンには絶対に幸せになってもらいたいの」
ヨハンの声を遮って、エルナは言った。
「知ってたんだ。アリーシャとの話」
「ええ。おめでとう」
「……っ! あれは、両親に勝手に決められてっ……本当は――」
庭園を散歩するエルナを遠巻きに見つめながら、数人のメイドがひそひそと内緒話を始める。
「伯爵家の生まれであんな美貌を持っているのに、ルードヴィヒのところへ嫁ぐなんて……エルナお嬢様が気の毒すぎるわ」
「前の奥様さえ生きていればねぇ……」
メイドたちは、心底エレナの境遇に同情しているようだ。そんなメイドの思いなどつゆ知らず、エルナは最後の散歩を楽しむように、ゆっくりと庭園での散歩を続けている。
(お母様が生きていたころ、手を繋いでここを散歩したのよね。ふふっ。懐かしい。……こことももう、お別れなのかぁ)
過去の楽しかった記憶を思い出していると――。
「エルナ! ……ここにいたのか」
エルナの背中に向かって、名前を呼ぶひとりの男が現れた。茶色い髪を風になびかせ、ひどく焦った顔をしている。
「ヨハン! どうしたの?」
庭園への来客者は、幼馴染のヨハンだった。
「どうもこうもないよ! 君がシェーンベルグへ行くと聞いたから……」
話を聞くと、ヨハンは公爵家の仕事の都合で、ここ数日は離れの屋敷で過ごしていたという。そこでエルナの話を聞いて、急いで王都へ戻ってきたようだ。
「……あの話、本当なのか?」
ヨハンはまだ、現実を受け入れられていないようだ。しかしエルナもまだ、自分が母国を去り竜人の国へ嫁ぐという実感がなかった。
「……ええ。本当よ」
しかし、実感はなくとも事実は事実だ。こんな状況でも変わらない笑みを浮かべるエルナを見て、ヨハンの胸はひどく締め付けられる。
「どうして君が……まさか、エルナが選ばれるなんて」
ヨハンの顔がみるみるうちに真っ青になる。
事実を突きつけられてなお、ヨハンは現実を受け入れられずにいた。
「今までありがとうヨハン。……これからは、ひとりでうまくやっていくから。心配しないで」
「……そんな、今からでもどうにか」
「大丈夫だから。……アリーシャと仲良くね。私、ヨハンには絶対に幸せになってもらいたいの」
ヨハンの声を遮って、エルナは言った。
「知ってたんだ。アリーシャとの話」
「ええ。おめでとう」
「……っ! あれは、両親に勝手に決められてっ……本当は――」