交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

「手を繋ぐくらいいいだろ」


仮にもこれから入籍するのだから。


「でも、車はすぐそこです」
「それじゃ足りない、もっと繋いでいたいって?」
「違います。繋ぐまでもない距離だと」


つれない返事には苦笑いしかない。

そうしている間に、彼女の言う通り車に到着してしまった。ね? と吉鷹を見上げる茉莉花の少し得意げな顔が、やけにかわいい。


「それならこうしよう。これからは外を歩くときは手を繋ぐ」
「そんなルールを決めないでください」
「俺たちが本物の夫婦になるために必要なこと。よし、異論がないようだから決まりだ」
「ちょっ、異論がないもなにも、私はまだ――きゃっ」


咄嗟に抱き寄せた茉莉花の口から小さな悲鳴が漏れる。議論に花を咲かせてよそ見をしていた彼女のすぐそばを、自転車が猛スピードで走り抜けていった。


「……ありがとう、ございます」
< 109 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop