交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

見渡す限りの青い空にエメラルドグリーンの海。白い砂浜が長く続くビーチは、乾いた風が吹いていた。

(ここはどこ……?)

振り仰ぐと、永遠の絆を意味するエンゲージメントダイヤモンドの形をしたチャペルがあった。

(……ハワイ? もしかして私、夢でも見ていたの?)

茉莉花は白いコットンシャツに黒いクロップドパンツを穿いている。
ウエディングドレスではなく、隣に吉鷹の姿もない。彼との結婚生活は記憶にあるはずなのに、どことなく現実味もなかった。

(それともタイムスリップして、あのときのハワイに時間が巻き戻された?)

吉鷹の社長就任式で大騒動が起こり、茉莉花を哀れんだ神様が時間を巻き戻してくれたとか。でも、今回の一件でもっとも迷惑を被ったのは吉鷹だ。

茉莉花の頬を撫でていく潮風が、やけに生温かい。それほど強く吹いているわけではないのに、髪がかき乱される不思議。遠くから茉莉花を呼ぶ声が聞こえてきた。

振り返っても、ただ砂浜が白く続くばかりで誰もいない。

愛しさを覚える声を探しているうちに視界がぐにゃりと歪み、体ごと遠くに連れ去られる感覚がした。
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