交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
茉莉花が仕事を終えたのは、それから一時間が経過した頃だった。
さすがに吉鷹は痺れを切らせて帰っただろう。傲慢な御曹司なら待っていられないはずだ。きっと、人を待たせるのは平気でも、自分が待たされるのは我慢ならないだろうから。
そう思いつつサロンを出て歩きはじめた茉莉花の予想は、見事に外れた。
サロン左手の植え込みの柵に、彼が体をもたせかけていたのだ。仕事でもしているのかタブレットを操作していた。
何人もの通行人が吉鷹をチラチラと見ながら行き過ぎていく。薄暗くなりかけた空の下でも、彼の美麗な姿は隠せないようだ。
ふと吉鷹が目線を上げ、足を止めた茉莉花に気づく。口角を上げて笑みを浮かべた。
作り笑いとわかっていても危険だと、心に鉄壁のガードをする。
「待っていらしたんですか」
「帰ると思ったのか」
「はい」
素直に認めると、吉鷹は眉根をぎゅっと寄せた。
「待ってると言っただろう。俺は自分の発言には責任を持つタイプだ」