交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
「す、すみません」
反射的に彼から離れ、パーソナルスペースを守る。それでも手は繋がれたままだ。
彼に連れられて階段を降りると、木目調のドアがあった。インターフォンを押し、店員に案内されて店内へ。さらにもうひとつのドアをくぐり抜けて進むと、ようやく店の全貌が現れる。
木のぬくもりのある落ち着いた内装の空間にはカウンターが六席と、個室がひと部屋のみ。こぢんまりとした店だが、ひと目で居心地がよさそうだと感じる。
「いらっしゃいませ」
カウンターの中にいた四十代くらいの男性が柔和に微笑んだ。ここの店主だろう。
「大将、こんばんは」
「いつもご贔屓にありがとうございます」
よく来る店のようだ。店主の目が茉莉花に向けられたのを受け、吉鷹が「妻です」ととんでもない紹介をした。
「ち、違いますから」