交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

彼の実家を後にし、イタリアンレストランで昼食をとってから、今度は茉莉花の実家へやってきた。今日一日で両家に結婚の許しをもらうという強行スケジュールである。

吉鷹の実家への手土産は高級パティスリーのゴルゴンゾーラのチーズケーキだったが、こちらはどら焼きという超庶民派の和菓子。茉莉花の両親の大好物だ。

とはいえ観月家御用達の老舗和菓子屋が作るどら焼きというから、茉莉花や家族が普段食べているスーパーのどら焼きとはわけが違う。

ごく一般的な一軒家の前に車が停車する。吉鷹が運転席から降りようとしたときだった。
彼のスマートフォンが胸ポケットでヴヴヴと空気を震わせる。


「ちょっと悪い」


ひと言断り、吉鷹はそれを耳にあてた。


「はい、観月です。なにかあったのか? ……開発途上国では治水施設整備や河川改修が行われていないケースが多いからな。自然災害などに起因する沈下や傾きが発生するのは珍しくない」


仕事の電話らしく、吉鷹の表情が一変する。声のトーンも茉莉花と話すときより低い。
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