交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
会議終了後、吉鷹は副社長室で永長が淹れたコーヒーを飲んでいた。
「いつにも増して力が入ってらっしゃいましたね」
トレーを抱えたまま永長がデスクのそばで微笑む。
三十歳の彼は大学を卒業して入社以来、さまざまな取締役たちの秘書を歴任し、二年ほど前に吉鷹の秘書となった。
堀の深い顔立ちは凛々しく、ラグビーで鍛えた体躯は屈強な男というイメージを与える。対外的には秘書よりもSPと認識されているようで、連れ立って歩くと『秘書はどちらに?』と尋ねられることも多分にある。
「そうか?」
「ご結婚で精神的な支えを得たのが理由でしょうか」
「それは嫌味か」
「いいえ、断じて違います。なにしろしっかり新たなお相手がいらっしゃるのですから」
永長は悪びれもせずにっこり笑った。
副社長相手でも容赦のない物言いは、かえって清々しい。必要以上に気を使われるよりずっといいとすら思う。