あなた私の夫と不倫してますよね?
私のその痛みは、陣痛だったみたいで。


私は初産だけど、そうやってお産の進みが早く、
病院に着いて、一時間くらいで出産した。



「元気な、男の子です」


分娩室の中。


我が子を取り上げてくれた、女性の助産師さんが、そう言ってくれた。



「桃子ちゃん。
ありがとう」


私の手を握り、楓は涙を流しながら、そう喜んでくれた。


あの後、細木南さんは救急車を呼ぶと、
楓に連絡してくれたらしい。


生まれた子供は、予定よりも1ヶ月程早く、
だけど、体重は2400グラムあり、元気一杯。


ただ、予定日よりもかなり早く生まれているので、数日はNICUに入るらしく、母子共に一緒に退院は出来ないかもしれない。



病室に行き、子供はそのNICUに居るから、今は楓と私の二人。


個室ではないのだけど、この部屋の入院患者は、今は私だけみたい。


「赤ちゃん、俺にソックリだったよな?」


そう、嬉しそうに笑う楓の顔を見ていて、
私、この人の笑った顔が大好きだったんだな、って思い出したように思う。


私は本当に、この人が大好きで。


そう思うと、この人に無理矢理浮気させて、とか、本当に私、何でそんな事をしたのだろうと、
涙が溢れて来た。



「桃子ちゃん?
どうしたの?
まだ、お腹痛い?」


そう言って、布団の上からだけど、私のお腹を撫でてくれる。



私は横たわっていた体を起こして、楓に抱き付いた。



「楓…大好き。
ごめんなさい…」


そう言うと、そのまま大きな声を出して泣いてしまった。



「俺も、桃子ちゃんが大好きだよ」


そう、許すように私の頭を撫でてくれる。


この人は、いつも私をそうやって許してくれる。


本当に、優しい人で。


本当に大好きで、大切な夫。


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