【書籍化に伴い冒頭のみ公開】クールな御曹司の溺愛ペット
「仕事を探していたんだって、妹から聞いたよ。ちょうど猫の手も借りたいところだったんだ」
「あの、私なんかでよかったのでしょうか」
いや、本当に。フッた相手を雇うとかどういう神経してるの。
……フラれた相手の元にのこのこ働きに来た私も大概だけど。
それに一成さんは副社長。そんな偉い人の秘書なんて私なんかで務まるかどうかも不安なのに、一成さんに恥をかかせないかも心配で仕方がない。
「千咲がいいからオファーした。何か問題でも?」
「い、いえ……」
そんな風に言われると悪い気はしない。むしろ良いように捉えてしまって落ち着かなくなる。
「それに……」
「……?」
言い淀んで一成さんは困ったようにほんの少しだけ眉を下げた。
「俺の秘書になる者は俺が嫌になってすぐに辞める。俺に原因がある……とは思っているが改善できない」
一成さんを嫌になる?
そんなことあるの?
「だから千咲には長く働いてもらいたいのだが……」
「えっと、できるだけ頑張ります」
深々と頭を下げる私に、一成さんはポンポンと優しく頭に手を置いた。